最初のショック
昔、初めてディズニーランドを訪れて、ミッキーの舞台ショーを観ていた時にそれは起こりました。
舞台の上のミッキーマウスが客席後ろの方を向いて呼びかけると、客席後ろの壁にスポットライトが当たり、壁にかかっていたカモシカのはく製(人形)が動き出して、生きているかのようにミッキーと会話を始めました。
ところが、話が終わりミッキーが他所を向くと、スポットライトは消えて、先ほどまでとても人懐こく話していたカモシカは、ただの物体になって暗闇で目を開けたまま凍り付いたように静止しました。
多くの人は明るい舞台に夢中で気づきませんが、私はカモシカのすぐ近くにいたので、そちらの方が気になって、血の通った友達だと感じたものが暗闇の冷たい物体に戻り、幻想だったことにショックを受けました。
それから再びスポットライトがカモシカに当たると、また友達のように愉快に動き話し出しましたが、気づいてしまった自分にとっては違和感しかありませんでした。
でもおかげで、世界というもののからくりは、スポットライトを当てると動き出す幻想にすぎないのではないかと、おもうようになりました。